TRPM2を介したCa2+流入が、ヒト単球細胞株U937における過酸化水素によるケモカインCXCL8の産生に、Erk及びNF κ Bを介して関与することが明らかになった。Erk活性化は、Ca2+依存性チロシンキナーゼPyk2がTRPM2を介したCa2+流入を感知し、Rasの活性化を介して引き起こされる。活性化ErkはNF κ Bの核内移行を惹起し、CXCL8産生誘導を引き起こし、単球におけるCa2+及び過酸化水素によるCXCL8産生誘導を結びつける分子実体として、TRPM2が機能することを明らかにすることができた。このように、TRPM2を中心として、これらのタンパク質群がどのようにして、シグナル複合体channelsomeを形成するかを明らかにするための重要な一歩となる成果を上げることができた。次いで、TRPM2 KOマウスを作製し解析を続けたところ、Dexstran sulfate sodium(DSS)誘導性の潰瘍性大腸炎を惹起した炎症マウスモデルにおいて、WTマウスの単球及び大腸において強いケモカインCXCL2産生が認められたが、TRPM2 KOマウスにおいてはそれが抑制されていた。また、単球/マクロファージの大腸への浸潤はWT及びTRPM2 KOマウスともに同程度認められたが、好中球の浸潤はTRPM2 KOマウスにおいて著しく抑制されていた。好中球の遊走能はWTとTRPM2 KO間で違いがなかったことから、炎症部位のマクロファージにおけるTRPM2依存的なCXCL2産生誘導が好中球の大腸への浸潤を惹起していることが明らかになった。DSS処置後のWTマウスの大腸に認められた潰瘍形成は、TRPM2 KOにおいて強く抑制されていた。以上、本研究により、単球/マクロファージのTRPM2 channel someの炎症における生理的意義が明らかになった。
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