私たちは、昨年度までに、造血幹細胞やBリンパ球のニッチ細胞の候補として成体骨髄でCXCL12高発現細網細胞(CAR細胞)を同定した。CAR細胞は、骨髄での造血を支持する機能的細胞外環境の最も重要な構成細胞である可能性がある。 (1) CAR細胞と造血幹細胞との相互作用の解明。 世界的に造血幹細胞の可視化が未だ十分でないため、造血幹細胞の局在は証明されるに至っていないが、私たちは、既知のマーカーの中から造血幹細胞の約40%を可視化できるマーカーを確認し、当該マーカー陽性細胞の大部分がCAR細胞の突起と接着すること、SNO細胞と接着する細胞はほとんど存在しないことを確認した。 (2) CAR細胞の血液系細胞の発生、再生における役割の解析。 ヒトジフテリア毒素投与により、CAR細胞を除去することができるCXCL12遺伝子座をヒトジフテリア毒素受容体遺伝子に置換したノックインマウスの作製に成功した。このマウスはCAR細胞の生理的役割の解明に大変有用であることが期待される。 (3) 骨髄でニッチを形成する支持細胞による造血制御の全貌の解明。 CAR細胞以外で造血細胞のニッチとなる可能性のある大部分の付着細胞細胞が含まれるよう骨髄細胞を分画化し、既知の細胞外環境の構成分子を中心に機能遺伝子の発現量をCAR細胞と比較した。その結果、CAR細胞が特異的に発現する細胞外環境構成遺伝子を複数同定し、今後の骨髄の付着系細胞の機能の解明に有用な知見であると考えられる。 (4) 血液系細胞の発生を制御する細胞外環境のin vitroでの再構築。 従来の試験管内骨髄ストローマ細胞培養法ではCAR細胞を培養することはできなかったが、全骨髄細胞からCAR細胞を試験管内で培養する方法を開発した。
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