研究概要 |
これまで、ADAMの発生・再生・疾病における役割と機能に関する研究をおこなってきた。特に、ADAM12,19,9(メルトリンα、β、γ)、ADAM8など、構造的にみて、ADAM17(TACE)やADAM10(Kuzbanian)に比べてより蛇毒出血因子とホモロジーが高いサブファミリーの役割と機能に焦点を絞った研究を行ってきた。今年度はマウスに加えてゼビラフィッシュを用いた個体レベルの研究を推進し、ADAMプロテアーゼは試験管内では一見基質特異性が低く見えるが、生体内では個々のADAMが異なる細胞間相互作用を制御することを明らかにした。心臓内膜形成や神経グリアの分化・ミエリン化に関与するADAM19は、それらに隣接する細胞や組織で必要とされる。神経細胞の膜画分に局在するグリアのミエリン化活性がADAM19を必要とすることなどから、ADAM19はSchwann細胞の分化を制御することがわかってきた。そこでSchwannn細胞分化におけるADAM19の役割・メカニズムをさらに精査するため、ゼブラフィッシュを用いて、Schwann細胞と神経軸索の挙動のライブイメージングを行った。その結果、ADAM19の欠損により、Schwann細胞は軸索を移動した後、生存できないことがわかった。この効果は、マウスにおけるErbB3ノックアウトマウスの表現型と一致するもので、ADAM19がNRG1切断活性をもつことを考え合わせると、このプロテアーゼがNRG1の切断・ErbBシグナリングのジャクスタクライン活性化を介して、Schwann細胞の生存に関与することがが示唆された。(未発表)。さらに、ADAM8が胚における血液循環開始に関わることを発見した。ADAM8は赤芽球で発現し、循環開始の際ピンポイントで接着因子のシェディングを行うことにより、血液細胞の血管からの接着を解除する、という血液循環の新しいメカニズムを提唱した(Iida et al., Current Biol., 2010)。
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