研究概要 |
インテグリンによるラミニンの認識部位の探索 : インテグリンによるラミニンの識別にはラミニンα鎖C末端領域に存在する三つのLGドメイン(LG1,LG2,LG3)が必要であるが、これら三つのLGドメインの中のどのアミノ酸残基がインテグリンとの結合に関わるかはこれまで不明であった。インテグリンリガンドは、そのインテグリン結合部位に酸性アミノ酸残基を有することが知られている。これらLGドメインに存在する合計54個の酸性アミノ酸残基を他のアミノ酸残基に個別置換した変異体を作製したところ、予想に反してインテグリン結合活性が大きく低下した変異体は得られなかった。一方、一部の塩基性アミノ酸残基を置換した変異体では、著しいインテグリン結合活性の低下が認められた。これらの結果から、ラミニンα鎖LGドメインの役割はインテグリンの二価金属イオンに配位するアミノ酸残基を提供することではなく、インテグリンのα鎖βプロペラドメインと静電結合する塩基性アミノ酸残基を提供することにあると推察される。 ラミニンγ1鎖ノックインマウスの作製 : 我々はこれまでにラミニンγ1鎖のC末端領域に保存されているグルタミン酸残基がインテグリンとの結合に必須であることを見いだしている。実際、このグルタミン酸残基をグルタミンに置換するとラミニンのインテグリン結合活性はほぼ完全に消失する。そこでこのグルタミン酸残基をグルタミンに置換したγ1鎖を発現するノックインマウスの作製を行った。現在、germlineに変異が入ったヘテロマウスが得られている。今後、ホモ個体の表現形質を解析することにより、胚発生・器官形成におけるラミニンとインテグリンの相互作用の生理的意義の解明を進める予定である。
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