研究概要 |
(1) CRMPsファミリー分子遺伝子欠損マウスの作製と表現型解析:すでにCRMP1, CRMP3, CRMP5およびCRMP2S522Aノックインマウスの作製および表現型解析に着手・成功し,細胞極性,細胞移動,樹状突起の異常,スパイン成熟遅滞などの神経形態異常に加え,crmp1欠損マウスにおいては,メタンフェタミンなどの薬物に対する過剰応答,プレパルスインヒビションテストの陽性などの行動異常を示すことを見出した.crmp1-/-バックグランドにcrmp2kiホモマウスの表現型を観察したところ,同マウスの第V層錐体細胞の樹状突起の伸長パターンは,basal dendriteの伸長方向が通常とは全く逆になるという特異な表現型を示すことが明らかとなった.(2) Sema3Aのシグナル伝達機構と機能分子の局在制御:Sema3Aが樹状突起のパターン形成,スパインの成熟を,Cdk5の活性化と,それにもとづくCRMPリン酸化のプロセスを介して促進することを明らかにした.後根神経節細胞において,Sema3AがFynおよびCdk5を介して軸索輸送を亢進するとの現象を見出していたが,その生理学的役割は長らく不明であった.海馬培養細胞においては,Sema3Aは軸索のみならず樹状突起輸送をも亢進すること,Sema3Aの作用部位は軸索成長円錐に限局し,成長円錐局所のシグナルが,イオンチャネルと逆行性軸索輸送の双方の連関によって樹状突起に伝搬されること,その輸送の積み荷は,PlexAs/GluR2であることを明らかにした(投稿中).(3) ネトリン/UNC-6およびネトリン受容体/UNC-5などのガイダンス分子ならびにその受容体の局在異常を示す線虫変異体の遺伝学的解析:生体内における機能分子の位置情報が神経回路形成に必須であること,ならびにその分子機構を明らかにすることを目的として,UNC5::GFP, UNC-6::GFPを発現するトランスジェニック線虫を作製し,その局在に異常を示す変異体を単離した.この線虫変異体の原因遺伝子の特定を試み,現在までにunc-104, vab-8, unc-73, unc-14, unc-18等の分子を同定した.
|