研究概要 |
3,461アミノ酸残基からなる巨大分泌蛋白質リーリン(reelin)は脳のレイヤー構造の形成を司る分子であり、その遺伝子変異は脳の形成異常を引き起こす。一般にリーリンは、移動神経細胞上に存在する受容体(リポ蛋白質受容体ファミリーに属する、ApoE受容体及びVLDL受容体)に結合して、細胞内蛋白質Dab1のリン酸化を引き起こし、それが下流シグナル活性化へつながるとされている。リーリンは分泌シグナルを含むN末端領域、8回の繰り返し構造(リーリンリピート)、及び塩基性アミノ酸残基に富むC末端領域(CTR)からなる。CTRは32アミノ酸残基であり、その一次構造は爬虫類以上の全ての動物種で完全に保存されている。本研究では、CTRの機能に着目して解析した結果、意外なことにCTRの一次構造や、CTRが高度に塩基性であることはリーリンの分泌に必ずしも必須ではないことが明らかとなった。その一方で、CTRは、リーリンの受容体を介した下流情報伝達系の効率的な活性化に必要であることが強く示唆された。この点では特にCTRが塩基性アミノ酸残基に富むことが重要であると考えられる。さらに、小脳におけるリーリン受容体の局在について、アルカリフォスファターゼとリーリンの融合蛋白質を作製して検討した。その結果、少なくとも生後の小脳においては、リーリン受容体は従来考えられていたようにプルキンエ細胞に発現しているのではなく、主に内顆粒細胞層に存在していることが明らかとなった。
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