Notch受容体(Notch)を介する情報伝達系(Notch情報伝達系)は、細胞間の直接的接触による細胞間相互作用(ジャクスタシグナル)で機能している。ショウジョウバエの上皮細胞のNotchが、頂端部付近に局在していることは、すでに知られていた。しかし、Notchの頂端部への局在化機能や、その機能的な意義については、まったく研究されてこなかった。我々は、ショウジョウバエのハネ成虫原基の上皮細胞において、Notchが、adherens junctions (AJ)とsubapical complex (SAC)に局在化していることを明らかにした(以下、SAC/AJとする)。NotchのリガンドであるDeltaとSerrateも、SAC/AJに局在した。 次に、NotchがSAC/AJに輸送される経路を解析した。ショウジョウバエ上皮細胞で新しく合成されたNotchは、まず、エキソサイトーシスによって、AJや頂端面の細胞膜に特異的の輸送される。次に、トランスサイトーシスによって、細胞膜上のNotchがSAC/AJに再輸送されて、そこに局在化すると考えられた。この過程は、NotchのO-フコシル化に依存して起こると考えられた。ショウジョウバエE-カドヘリンを、翅成虫原基の上皮でノックダウンすると、SACが正常に形成されず、Notchとそのリガンドの局在が異常になる。このとき、Notch情報伝達の低下が観察された。同時に、上皮細胞で機能するもう一つのジャクスタシグナル系である、Fat情報伝達も低下した。Fat受容体とリガンドも、AJ付近に局在している。これらの結果から、NotchやそのリガンドのSAC/AJへの局在化は、上皮細胞でのジャクスタシグナルに普遍的に必須であると考えられた。
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