研究概要 |
Notch受容体(Notch)を介する情報伝達系(Notch情報伝達系)は、細胞と細胞の直接的な接触を介した細胞間情報伝達で機能している。Notchとそのリガンドは、ともに、adherens junctionに局在している。研究代表者は、adherens junctionが、Notchの活性化に必要な、特殊な細胞外の微細環境を提供していると考えている。Notchのadherens junctionへの局在化には、Notchのエキソサイトーシスとエンドサイトーシスが関与していることを示唆する結果を得ている。本研究計画では、Notchのadherens junctionへの局在化機構を明らかにすることを目的とし、Notchの小胞輸送に関与する遺伝子を同定する。 ショウジョウバエ・ゲノムの約6,000の遺伝子に対して、in vivoでRNA干渉法を行うことが可能な系統が樹立されている(遺伝研・上田)。平成18年度までに、これらの系統を用いて、Notchの細胞内小胞輸送に関与すると考えられる遺伝子を網羅的にスクリーニングした。その結果、20程度の候補遺伝子を同定できた。しかし、RNA干渉法では、非特異的な遺伝子機能の抑制が起こるので、機能喪失型の突然変異を用いた研究が必要である。 平成20年度の研究では、これらの候補遺伝子のうちの4つについて、機能喪失型の突然変異を作出することに成功した。このうちの2つについては、Notch情報伝達への関与が確認できた。また、別の3つの遺伝子についても、機能喪失型の突然変異の作出をほぼ完了した。今後は、これらの突然変異体を用いた解析を進めることで、Notchの小胞輸送に関与する新規な遺伝子の機能を明らかにできると考えられた。
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