Notch受容体(Notch)を介する情報伝達系(Notch情報伝達系)は、細胞と細胞の直接的な接触を介した細胞間情報伝達で機能している。Notchとそのリガンドは、ともに、adherens junctionに局在している。研究代表者は、adherens junctionが、Notchの活性化に必要な、特殊な細胞外の微細環境を提供していると考えている。Notchのadherens junctionへの局在化には、Notchのエキソサイトーシスとエンドサイトーシスが関与していることを示唆する結果を得ている。本研究計画では、Notchのadherens junctionへの局在化機構を明らかにすることを目的とし、Notchの小胞輸送に関与する遺伝子を同定する。 ショウジョウバエでは、in vivoでRNA干渉法を行うことで、ゲノム遺伝子を網羅的にノックダウンすることが可能である。研究代表者は、平成21年度までに、国内で樹立された5000遺伝子に対するRNA干渉系統(NIG、上田龍)を用いて、Notchの細胞内小胞輸送に関与すると考えられる遺伝子を網羅的にスクリーニングした。その結果同定できた遺伝子と、ヨーロッパのグループによって独立に行われた、別のRNA干渉系統(VDRC)を用いた同様なスコリーニングで同定された遺伝子の間で共通したものを選別した。その結果、Notch小胞輸送で機能している可能性がある7遺伝子を同定した。このうち4遺伝子については、突然変異体を作出し、表現型を解析したが、これらの遺伝子とNotch小胞輸送との関連は認められなかった。今後、残った3遺伝子についても、突然変異体を用いた解析を進めることで、Notchの細胞内小胞輸送に関与する新規な遺伝子を同定したいと考えている。
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