研究課題
分泌性シグナルタンパク質が細胞外環境へどのように分泌され、その環境下でどのようにその拡散が制御され、さらにその濃度情報を細胞がどのように認識していくのかという問題は、動物の発生メカニズムを理解する上でまさに不可欠なものであるが、その理解はまだほとんど進んでいない。そこで本研究では、尾芽で産生されるWntとFGFに着目し、(1)その分泌、拡散の機構と(2)その濃度情報認識機構に焦点を当てその解明を目的に研究を行う。今年度は、(1)に関しては、Wnt3aが脂質修飾されること、ならびに脂質修飾に必要なアミノ酸残基が分泌にも必要なこと、そしてこの過程には小胞体タンパク質porcupineが必要なことを明らかにした。次年度以降は、脂質修飾がWntタンパク質の分泌にどのように関わるのかを解明していく予定である。(2)に関しては、尾芽における体節形成過程においてFGFシグナルの濃度情報認識機構の解明に焦点を当てた。具体的には、FGFシグナルによる誘導機構に異常を示す体節形成変異体ゼブラフィッシュの原因遺伝子をポジショナルクローニングにより同定することを試みた。その結果、原因遺伝子の位置を第21番染色体上の約900kbの範囲内に絞り込んだ。この領域内には10個以上の遺伝子がマップされており、さらなる絞り込みを続ける予定でいる。一方、Wntシグナルの濃度情報認識機構については、Wnt受容体Frizzled10の機能阻害実験を試みた。今年度までに得られた結果から、Frizzled10は体節形成に必要であることを示唆するものの、機能阻害実験に特異性に問題の余地を残しており、次年度以降さらなる検討を行う予定でいる。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
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