研究課題
分泌性シグナルタンパク質が細胞外環境へどのように分泌され、その環境下でどのようにその拡散が制御され、さらにその濃度情報を細胞がどのように認識していくのかという問題は、動物の発生メカニズムを理解する上でまさに不可欠なものであるが、その理解はまだほとんど進んでいない。本研究では尾芽で産生されるWntとFGFに着目し、(1)その分泌、拡散の機構と(2)その濃度情報認識機構に焦点を当てその解明を目的に研究を行う。(1)に関しては、前年度までの研究から、Wnt3aが脂質修飾がこのタンパク質の分泌と密接に関連しており、そしてその過程には小胞体タンパク質porcupineが必要なことを明らかにした。今年度は、この脂質修飾がWntの分泌過程のうち小胞体からの輸送に必須であることを明らかにした。さらにこの修飾される脂質の構造を質量分析法を用いて解析した結果、モノ不飽和脂肪酸であるパルミトレイン酸が付加されているということを突き止めた。(2)に関しては、尾芽における体節形成過程においてFGFシグナルの濃度情報認識機構の解明に焦点を当てた。具体的には、FGFシグナルによる誘導機構に異常を示す体節形成変異体ゼブラフィッシュの原因遺伝子をポジショナルクローニングにより同定することを試みた。前年度より行って来たポジショナルクローニングの結果、第21番染色体上に候補遺伝子を見いだすことができた。次年度以降は、この候補遺伝子が実際に表現型の原因遺伝子であるかどうかについて、遺伝子ノックダウン法などにより確認をする予定である。一方、Wntシグナルの濃度情報認識機構については、Wnt受容体Frizzled10の機能阻害実験については、機能阻害実験に特異性に問題があると判断し、当面は他の研究テーマ(上記の[1]と[2])に集中して研究を進展させて行くことにした。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
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