研究概要 |
分泌性シグナルタンパク質が細胞外環境へどのように分泌され,その環境下でどのようにその拡散が制御され,さらにその濃度情報を細胞がどのように認識していくのかという問題は,動物の発生メカニズムを理解する上でまさに不可欠なものであるが,その理解はまだほとんど進んでいない。本研究では尾芽で産生されるWntとFGFに着目し,(1)その分泌,拡散の機構と(2)その濃度情報認識機構に焦点を当てその解明を目的に研究を行う。(1)に関しては,前年度までの研究から,Wnt3aはモノ不飽和脂肪酸であるパルミトレイン酸のより修飾されており,この修飾がWntタンパク質の分泌過程のうち小胞体からの輸送に必須であることを明らかにした。また,この修飾には小胞体タンパク質porcupineが必要なことを明らかにした。今年度は,細胞外環境に分泌されたWntタンパク質の拡散のメカニズムを理解するために,まず分泌されたWntタンパク質の高次構造を解析した。ゲル濾過法等によりその分子量を測定したところ,予想に反して500〜1500KDという巨大な複合体を形成することがわかった。この複合体はほとんどがWntタンパク質から成るホモオリゴマーであることを明らかにした。(2)に関しては,尾芽における体節形成過程においてFGFシグナルの濃度情報認識機構の解明に焦点を当てた。具体的には,FGFシグナルによる誘導機構に異常を示す体節形成変異体ゼブラフィッシュの原因遺伝子をポジショナルクローニングにより同定することを試みた。前々年度より行って来たポジショナルクローニングの結果,ならびに遺伝子ノックダウン実験から候補遺伝子を特定することができた。次年度以降はその遺伝子産物の機能解析を行う予定である。
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