研究課題/領域番号 |
17083007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒田 明伸 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70186542)
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研究分担者 |
岸本 美緒 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80126135)
安冨 歩 東京大学, 大学院・情報学環, 助教授 (20239768)
須川 英徳 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (80272798)
櫻井 英治 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (80215681)
櫻木 晋一 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00259681)
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キーワード | 貨幣 / 日本中世 / 東アジア / 個別発見貨 / 朝鮮貨幣史 / 永楽銭 / 補完性 / バザール |
研究概要 |
本研究は、第一に、国別研究を超えて、東アジア三国の貨幣流通の相違と共時性を明らかにすること、第二に考古学的知見を取り入れること、第三に世界史全体と連関させ、そして史実から理論への提言をすることの三点を企図しているが、それぞれに進展があった。 第一回(9月26日)と第3回(3月3日)の研究会では日本中世貨幣史研究の現状と課題を中心に議論した。出土銭貨研究の成果と東アジアの一部としての日本中世という視点をとり入れた新しい中世貨幣史研究を出版する作業が櫻井を中心に進展しつつある。第2回研究会(2月16日)では李栄薫(ソウル大)李憲昶(高麗大)両教授を迎え朝鮮貨幣史研究の最前線を学びながら、東アジア三国の比較を中心に議論した。布貨の存在が大きい朝鮮の特色などが浮かび上がりつつある。 物質情報としての貨幣に関して、櫻木を中心に欧州での所蔵東アジア貨幣の調査が開始された。出土銭貨研究大会(10月29・30日)では日中欧中世出土貨幣の比較が行われ、まとまった退蔵貨幣ではない個別発見貨の位置づけが焦点となった。また東海村での永楽銭枝銭の実見の結果、「永楽銭」が日本で鋳造されていたことがほぼ確実視されるなど、重要な知見が加わりつつある。 黒田はニューヨーク大学でのワークショップ、フランス国立高等社会科学研究院EHESSでの講演を通じて、東アジアの史実を基礎とした、貨幣間の補完性についての世界史大の比較を行う研究を国際的に組織しつつある。安冨は華北での農村調査をふまえながら貨幣流通の場となるバザールに関する理論的考察を発展させている。それらをふまえ、貨幣論を特集した『季刊インターコミュニケーション』誌上で安冨と黒田は貨幣論研究の問題点と歴史上の貨幣流通をふまえた展望を示した。歴史学や経済学の枠を超えて議論の環が広がりつつある。
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