研究課題/領域番号 |
17083013
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青木 敦 大阪大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (90272492)
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研究分担者 |
津田 芳郎 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30091474)
小川 快之 埼玉大学, 教養学部, 非常勤講師 (10400798)
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キーワード | 法文化 / 江西 / 台湾 / 中国 / 裁判 / 名公書判清明集 / 中世 / 判語 |
研究概要 |
本年度行われた、主たる活動は、研究代表者・分担者・協力者による海外での史料調査・研究交流活動、および国際シンポジウムの開催による、おもに宋代前後の江南裁判事例に見られる法文化、およびこれと台湾・日本法文化との比較であった。特に特定領域<東アジア海域交流>第4回講演会として国際シンポジウム「中国の法制と法文化」を2005年11月13日北海道大学文学研究科において開催し、津田が司会となり、青木が「南宋の裁判事例における"二十年法"について」と題する報告を行うとともに高明士・玄奘大学教授が「唐朝律令立法原理」、分担者小川が「宋代明州における社会経済状況と法文化」と題して報告した。続いて青木は台湾研究短期フェローシップを得、台湾中央研究院台湾史研究所に訪問学人としての身分を得、同研究院において淡新档案の調査にあたり、本研究が主題とする主に華南開発地帯の法文化との比較に有用な、清代台湾の裁判の実態を、日本では閲覧できない刑事を含めた档案史料を閲覧することによって比較検討することに成功した。またそのときの成果として、同研究院の淡新档案の目録(冊子およびネット上のデータベース)の謝りを訂正した。さらにこれに引き続き、津田が北海道大学・三木聰教授とともに台湾にわたり中央研究院において研究・交流活動を行い、判語史料のデータ作成をさらに充実させた。これらの研究を通じて明らかになってきたことは、土地交易(売買・回贖)における戸婚田土方面の法律の役割の重要性、およびその法文化の差異の大きさであった。さらに、一連の討論を通じて、重要な指摘が提起された。それは、中国宋代の裁判記録中に見える若干の法条と、同時期日本の御成敗式目、永仁徳政令との間に共通点が見られることである。これは現段階では、土地交易における回贖規定として、複数の文明に共通して見られる偶然の一致かも知れないし、また臨済宗などを通じて、幕府が財政上の必要から宋の法律を参照したからかも知れない。この点は、法文化比較の重要な課題として、次年度の分担者構成に反映させるとともに、引き続き、台湾の開発事例の検討も必要とされている。これらの成果の一端として、基盤研究(C)「江西〜湖南を中心とした宋朝「政区」の境界に関する研究」(課題番号:16520416)との合同の成果として、青木敦『宋代判語に見る民事的立法と地価変動』(Working and Discussion Paper Series No.1, ISBN 4-9902826-0-4)が2006年2月20日に発刊された。
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