研究課題/領域番号 |
17083028
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
高津 孝 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (70206770)
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研究分担者 |
大田 由紀夫 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (20295231)
陳 捷 国文学研究資料館, アーカイブズ研究系, 准教授 (40318580)
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キーワード | 出版文化 / 寧波 / 日中交流 / 東アジア / 海域史 / 石材 / 記録文化 / 貨幣 |
研究概要 |
出版文化班における研究は、中国東南部の代表的交易都市寧波における蔵書樓「天一閣」と寧波の蔵書家の蔵書を調査することで、書物の収集の様態、地域社会における意義、生成した学術・心性、その日本への伝播を明らかにすることを目的としていた。「寧波の蔵書樓「天一閣」研究」の点では、平成21年度は、寧波天一閣との共同調査、共同シンポジウムを中国、日本の双方で実現し(天一閣合同研究会「中国東南地区の文献集散と天一閣」(7月23日、寧波市天一閣)及び国文学研究資料館共催出版文化国際シンポジウム(11月21日、東京大学))、発表内容を論文として公表、「書物の収集の様態、地域社会における意義」と言う点を明らかにした。また、高津、大田、陳捷は、それぞれの専攻する学問分野に関連して、中国、台湾、日本各地の図書館を精力的に訪問調査し、陳捷「一八七〇・八〇年代における中国書画家の日本遊歴について」『中国-社会と文化』(第24号、2009年7月)等の学術的成果を挙げた。 学際的研究の推進の点では、鹿児島坊津輝津館所蔵の日本中世の石造物薩摩塔の石材が、寧波産石材梅園石であることを推定し、大木公彦(鹿児島大学総合博物館館長、岩石学)の協力のもと、それを科学的分析によって証明した(大木公彦・古澤明・高津孝・橋口亘「薩摩塔石材と中国寧波産の梅園石との岩石学的分析による対比」(鹿児島大学理学部『鹿児島大学理学部紀要』42、2009年))。さらに、北部九州地区(長崎県、佐賀県、福岡県)薩摩塔調査を行い、鹿児島県下存含め約二十基の現存する薩摩塔のほとんどについて、坊津薩摩塔と同一石材であるとの結論を得た(高津孝・橋口亘・大木公彦「薩摩塔研究-中国産石材による中国系石造物という視点から」(『鹿大史学』57号、2010年2月))。これは東アジア海域交流史に新たな視点を提供するものである。
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