本調整班の主たる課題は、次の二つである。(1)政治、文学、思想、法律、宗族、数学、医学など多分野の研究者が、文献資料学の方法論について討議を重ねる。(2)世界的に高水準にある我が国の伝統的文献資料学の手法を批判的に継承しつつ、欧米等の斬新な方法論を導入した資料分析の成果を視野に入れ、東アジア海域世界という、長期且つ広域の世界構造を明らかにする、独自の新しい文献資料学の創生を目指す。 上記の課題に従い、共同研究開始第4年度の平成20年度は次のような共同研究を進めた。9月は「東アジア海域交流」をめぐる文献資料学の可能性を探る研究集会を開催した。具体的には、日本、韓国などから中国へ渡来した留学僧、外交使節の日記、外交文書やについて検討を試みた。徐仁範(韓国・東国大学)、郭万平(中国・浙江工商大学)他の研究者を招聘した。 12月は社会文化史の方法論についてワークショップ形式の研究集会を開催した。ここでは、社会文化史研究における新たな文献資料学の可能性を検討した。B.Bossler(アメリカ・U. C. デービス)、劉静貞(台湾・成功大学)他の研究者を招聘した。 1月は総括班の重点項目の一つである「寧波を中心とした記録保存の社会文化史」をテーマとした国際シンポジウムを開催した。ここでは、特に「寧波」に焦点を当てた文献資料学、とりわけ石刻資料、地方志などの可能性を追求した。以上の成果の一部は、平成21年度に専門雑誌に特集号を組み、公表する予定である。
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