本調整班の主たる課題は、次の二つである。(1)政治、文学、思想、法律、宗族、数学、医学など多分野の研究者が、文献資料学の方法論について討議を重ねる。(2)世界的に高水準にある我が国の伝統的文献資料学の手法を批判的に継承しつつ、欧米等の斬新な方法論を導入した資料分析の成果を視野に入れ、東アジア海域世界という、長期且つ広域の世界構造を明らかにする、独自の新しい文献資料学の創生を目指す。 上記の課題に従い、共同研究最終年度の平成21年度は総括のための共通テーマ「文献資料学の方法論をさぐる」をもとに次のような共同研究を進めた。9月にはHilde de Weerdt(英国・オックスフォード大学)、1月には呉松弟(中国・復旦大学)、2月には曹家斉(中国・中山大学)を招聘し、文献資料学の方法論についてワークショップ形式の研究集会を開催した。とりわけ、欧米を中心に近年めざましい進歩を見せるCHGIS(中国歴史地理理信息系統項目)、CBDS(中国歴代人物資料庫)といった各種データベースを利用して新しい文献資料学を如何に構築するか、地理学、人口学、経済学、政治学などの隣接領域の方法論を如何に歴史学に取り入れ、文献資料学研究を進めていくのか、更にはフィールドワーク調査と文献資料学との融合の課題について集中討論を行った。 以上の成果は、5年間の総括の中に組み込む形で平成22年度に公表する予定である。
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