16世紀から現代に至る中国江南地域における医療とヒトをめぐる諸相の長期的変容を、生態環境および社会環境の変化との関連において考察する本研究の初年度では、まず研究代表者と分担者がそれぞれ個別テーマに関する文献および史料収集を行った。帆刈は、中国史上における医学地理、生気象学に関する文献を収集し、また江南地域の医療社会史の研究状況に関して上海の研究者と意見交換を行った。飯島は日本住血吸虫病に関する史料収集、現地調査などを国内および中国にて行い、成果の一部を2005年11月の東洋史研究会大会において報告した。また、東郷は、江戸期の伝統医学文献のデータベースから温病学関連文献を抽出し、中国における温病学との関係について基礎的な研究を行った。 また、学術交流としては、2006年1月に東京で開催された国際ワークショップ「歴史的視点から見た東アジアの伝統医学」("Traditional Medicine in East Asia from a Historical Perspective")に代表者と分担者が参加。韓国・台湾の著名な医学史研究者の参加のもと、東アジアにおける伝統医学の歴史研究に関する研究発表、および意見交換を行った。さらに東郷は、国際東洋医学会(International Conference of Oriental Medicine・韓国 大邱2005年10月)に参加し、朝鮮半島における温病学説の受容と展開について意見交換を行った。
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