平成20年度は、特定領域研究全体の重点項目の一つとして挙げられた、現地調査部門の企画による医療・環境に関する国際シンポジウム「環境との対話-東アジア海域世界と疾病-」を2008年12月21日に開催し、その中心的な役割を担った。この会議においては、他研究班(海域地域班、茶文化班)の関連する研究者や海外の研究者との討論や意見交換を通して、領域全体としての研究の質的一体化に貢献した。また、主に自然科学の分野から環境の問題を研究している総合環境学研究所の研究者との学術交流の構築を通して、より広い視野から中国の環境を研究する可能性が開かれた。具体的には熱帯感染症の研究プロジェクトとの協力により、疫学的な視点からの検討が行われた。 個別研究では、帆刈は引き続き、中国伝統医学における環境認識の変容を江南地域について研究調査を行った。とくに医学理論における南北の地域的差異の認識を問題にした。また、飯島は、江南における日本住血吸虫病の流行と環境変化の関係を引き続き調査した。とくに江蘇省の各県レベルでの状況を確認し、データの整理を行った。その研究成果は英文の論文として発表した。東郷は、19世紀から20世紀に至る中医臨床技術の伝承のあり方について分析を進めてきたが、新設大学への異動のため、8月末に分担者を辞退した。
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