研究概要 |
オーレオクロム(AUREO)は黄緑色藻フシナシミドロから単離したが, 他の黄色植物である褐藻ヒバマタ(Fucus)に2個, ケイ藻Thalasiossiraゲノムに3個のAUREOオルソログが存在することをすでに見つけている(2007). 今年度は, 黄金色藻, ラフィド藻などの他の黄色植物を培養し, そのmRNA中に常にAUREO1と2の対が常に保持されていることを明らかにした. 一方, 葉緑体を失ったストラメノパイル(卵菌類など)にはオーレオクロムが見つからなかった. おそらく, AUREOの起源は葉緑体を獲得する前の祖先真核細胞にあり, 卵菌類などは葉緑体を失って寄生生活に入ると同時にAUREOを捨てたと考えられる. 2008年11月に公表された羽状目ケイ藻Phaeodactylumのゲノムにも3個のオルソログが検出された. AUREOは青色光センサーであるLOVドメインと転写因子BZIPドメインでできている. これらのAUREO遺伝子群のアミノ酸配列を比較し, それらの系統関係を解析したところ, 興味ある事実があきらかになった. LOVドメインはバクテリアから菌類, 緑色植物で青色光センサーとして機能しているが, AUREOのLOVドメインは1群にまとまり, 黄色植物で独自に進化したことを示す. AUREO1と2は大きく2群に分かれる. 褐藻は黄緑色藻に近いが, ケイ藻とはやや遠い関係がAUREOの系統にも見られる. 一方BZIPの系統樹はAUREO内で大きく3群に分離した. この意味は不明であるが, AUREOの機能と進化を考える上で大きな手がかりとなる.
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