葉緑体は強光下で逃避反応を示し、その光受容体は青色光を吸収するフォトトロピン2(phot2)である。一方、弱光下で起こる集合反応の光受容体はphot1とphot2である。従って、phot2は弱光下では集合反応、強光下では逃避反応という、相反する現象の光受容体として働いている。本研究の目的は、phot2の相反する二つの作用がどのようにして誘導されるかを明らかにすることである。我々の予備実験の結果、phot2は細胞内で、それ自体が4量体を形成している可能性が高くなった。またN末端側を順次除去して行くと4量体から2量体、単量体へと変化することから、N末端領域が多量体形成に重要な役割を担っている事が明らかになった。そこで多量体の形成が逃避反応や集合反応にどのように影響するかを調べるために、phot1phot2二重変異体に4量体型、2量体型、単量体型を形成するような改変phot2を発現させ、それぞれの生理現象に対する影響を調べた。その結果、LOV1ドメインを含むN末端側0-236アミノ酸を削除して4量体と2量体が混在する構造になると集合反応は見られなくなったが、強光反応は正常であった。0-357アミノ酸を削除した2量体型は弱光下での集合反応は示さず、強光下での逃避運動はわずかに回復する。しかし、この体型のN末端側に4量体を形成するDsREDexpressを繋ぐと、強光下でも集合反応を示し、強光反応は示さなくなった。単量体型では集合反応も逃避反応も起こらなかった。以上により、phot2の機能には少なくても2量体以上の構造が必要であり、また4量体形成に重要なLOV1ドメイン側の領域は分子スイッチとしてphot2が逃避反応のみならず集合反応に機能するためにも重要であることが分かった。
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