研究課題
海水中のヘリウム同位体比を高感度・高精度で測定するために、新しい希ガス用質量分析計導入・調整した。その結果、現有の従来型希ガス用質量分析計に比較して、ヘリウムに対して約5倍の感度を達成した。また質量分解能も約20%改善した。また、白鳳丸および淡青丸の研究航海で海水試料を採取し、従来型の希ガス用質量分析計を用いて分析を行った。平成17年度には海底火山から放出されるマントルヘリウムをトレーサにして、海嶺上のヘリウム同位体比分布が海洋物理学の数値モデルと調和的であったことを示したが、平成18年度はマントルヘリウムの影響がほとんどない日本海においてヘリウム同位体比の分布およびトリチウム-ヘリウム-3年代の分析を行った。その結果、ヘリウム同位体比の深度分布は太平洋とは違ったものを示し、深さ1000m付近に極大を持つことがわかった。また1000mまでの海水のトリチウム-ヘリウム-3年代はCFC年代と調和的な結果を得た。数値計算の結果、極域において海水が大陸棚斜面上を深層へ沈降するメカニズムが解明された。海面冷却によって重くなった海水は複雑な渦流(傾圧不安定)を形成しながら斜面上を沈降した。一般に海洋中では等深線に沿う流れ(斜面下向きに働く重力と上向きに働くコリオリ力がバランスした地衡流)が形成されるため、海水は斜面上を沈降しにくいと考えられるが、実際には発生する渦がそうした等深線に沿う流れを壊すことで、海水を効果的に斜面下方に沈降させることが示された。さらに、既存の海洋観測データに基づいて深層水の大規模な循環を推定するため行った数値シミュレーションの結果によると、南太平洋から北上する深層流が日本東方にいたり、さらに千島列島沿いに北上する経路が現れている。モデルによれば、北緯20〜30度付近の2本の分枝の流量はともに5×10^6m^3/s程度であり、大西洋を南下する深層水などに匹敵する。
すべて 2006
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