研究概要 |
東京大学海洋研究所運用の研究船白鳳丸および淡青丸を用いて海洋観測を継続した。白鳳丸による観測航海では西部北太平洋において,黒潮続流域における深層循環の時間変動,精密CTD観測による深層水塊の分布の研究を視野にいれて,ヘリウム分析用の試料採取も精力的に行った。また,淡青丸による観測航海では予備的調査として沖縄トラフにおいて観測を行った。 これまでに確立したヘリウム分析システムを逮用して,大気と溶解平衡にある標準海水を分析しシステムの評価を行ったところ,文献値とよく合っていることを確認した。これまでに採取された海水試料の分析も進め,予備的調査として日本海にて採取した海水のトリチウムーヘリウム-3年代を求めることに成功したことを論文として発表した。 深層流の長期変動を明らかにすることを目的として,東北沖に平成17年度から約1年半,係留していた4系を回収し,うち3系をふたたび設置した。再設置した系は平成20年度に回収する予定であり,3年間の連続的な流速データが得られることとなる。 太平洋の循環を再現するための数値シミュレーション,モデルの構築を継続しており,特に太平洋に多い海溝や島弧などの細かい地形を解像できるように,入れ子モデルを開発している。また,風応力データセットや渦拡散係数などのモデル,パラメータを変化させて,流速場への影響を検証した。診断的なモデリングにおいては,風データの違いが与える影響は大きくないことがわかった。
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