研究概要 |
平成19年度の成果は以下にまとめられる。(1)蛋白質合成をヘム鉄の濃度をセンスして制御する酵素HRIの全長酵素のへム鉄の結合部位を決定した。即ち、N末端側のHis119,C末端側のCys409がFe(III)ヘムの軸配位子であることを同定した。(2)時計遺伝子の転写制御因子であるmPer2のPAS-Aドメインはヘム鉄の結合部位であり、Cysが軸配位であることをはじめて示した。(3)ヘム鉄が、ヘム鉄結合時計遺伝子転写因子であるNPAS2からmPer2-PAS-Aへ移動することを初めて示した。(4)時計遺伝子の転写因子であるmPer1のPAS-Aドメインへもヘム鉄が結合すること、及び軸配位子はCysであることを示した。(5)ヘムセンサー酵素、蛋白質であるHRI,NPAS2,mPer2,mPer1のヘム鉄への軸位子はいずれもCysのチオレートである。これらのヘム結合蛋白質に環境汚染物質である水銀を添加することによりヘム鉄は蛋白質より離脱した。メルカプトエタノールをさらに添加することにより、チオレートに再結合した。これらの結果は、水銀汚染により引き起こされる病態の解明と治療の一部に寄与できる可能性がある。(6)酸素センサー酵素であるEc DOSのガス結合による活性上昇の分子的な機構を解明することができた。即ち、ヘム鉄の軸配位子であるMet95のヘム鉄からの解離が活性上昇の重要な因子であることを示した。(7)Ec DOSの活性化には酸素がヘム鉄に結合することが重要である。ヘム鉄に結合した酸素分子はArg97と水素結合をしている。このArg97は酸素の自動酸化速度を遅くして、酸素結合型錯体を安定化するために重要な役割を果たしていることが確かめられた。
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