「平成21年度の研究実績」 [1]ヘム不足に応じて活性化するHRI。(1)動物細胞において遺伝子導入することによる過剰発現には成功しなかったが、元々細胞に存在するHRIの存在、その活性、及びヘムによる活性阻害を認めた。(2)マウスHRI、及びヒトHRIのリン酸化によりヘムの活性阻害反応が弱められること、逆に、脱リン酸化によりヘムの活性阻害作用が強められることが示唆された。(3)マウスHRIで34個のリン酸化部位を同定し、そのうち3箇所のリン酸化が活性に重要であることが示唆された。(4)ゼブラフィッシュHRIの活性はヒトHRI、及びマウスHRIより約2倍高く、又ゼブラフィッシュのヘム阻害作用はヒトやマウスより敏感であることが示唆された。(5)HSP90がマウスHRIの活性を上昇させることが示唆された。 [2](1)mousePer1のPAS-Aドメインにはヘムがヘム:タンパク1:1に結合して5配位高スピン型であるが、mousePer3のPAS-Aドメインにはヘム:タンパク2:1以上に結合し、2種類の錯体の混合物であることが示唆された。(2)mousePer1のPAS-Aドメインのヘム結合部位がシステイン244又は337であることが示唆された。(3)mousePer1とヘムとの反応に水銀が影響することが示唆された。 [3]マウスの日内活動に及ぼす環境汚染物質の影響を調べる研究は、研究環境を汚染物質が汚す可能性があるため、実験の実行が不可能になった。 [4]ガス応答ヘムセンサーEc DOSのホスホジエステラーゼ活性は、Na_2Sを添加することに上昇した。その活性上昇の程度は、好気的条件下では、嫌気的条件下の数倍高かった。Heme Fe(III)-SH錯体、及び硫黄がポルフィリンに取り込まれたSufheme Fe(II)などが活性種である可能性が示唆された。
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