研究課題/領域番号 |
17101004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾嶋 正治 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (30280928)
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研究分担者 |
組頭 広志 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (00345092)
岡林 潤 東京大学, 大学院工学系研究科, 助手 (70361508)
大久保 勇男 東京大学, 大学院工学系研究科, 助手 (20376487)
小野 寛太 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教授 (70282572)
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キーワード | 放射線X線粒子線 / 電子顕微鏡 / 強相関電子系 / ナノ材料 / 環境材料 |
研究概要 |
高輝度放射光を用いた光電子顕微鏡PEEMシステムを構築し、磁性ナノエレクトロニクス、半導体ナノエレクトロニクス、環境科学、ナノバイオロジーにおけるナノ構造の物性を解明し、新しい機能デバイスの開発に貢献することを目的としている。 今年度は光電子システムを用いた磁気イメージング、硬X線による埋め込みナノ構造のイメージング、および半導体LSI用絶縁膜のナノ領域分光法開発、3項目を重点的に実施した。 1)磁気イメージング:強相関系酸化物La1-xSrxMn03薄膜をレーザーMBE法で作製し、Mn2p吸収端のエネルギーをもつ円偏光放射光によってXMCD-PEEMイメージングを行った、この薄膜は格子定数が大きなSrTi03基板上に成長させているため、引っ張り応力を受けており面内に磁化している。従って、従来の磁気力顕微鏡MFMではイメージングが不可能であった。XMCD-PEEMを用いたイメージングの結果、La-xSrxMn03薄膜はSrTi03基板のステップに強く誘起された1軸異方性を持つことが初めて明らかになった。この薄膜を電子線露光+イオン加工によってサブミクロンパターンに加工し、その形状異方性を調べたところ、2μm以上のパターンではステップ誘起1軸異方性が支配的であるのに対して{2μm以下ではflux closureになることを見出した。磁気デバイスへの応用を考える上で、磁気異方性の制御は極めて重要であり、放射光PEEMによる磁気イメージングの威力を十分に発揮できた。 2)硬X線利用放射光光電子顕微鏡:軟X線を用いた光電子顕微鏡では光電子の脱出深さが浅いために表面領域のイメージングに限られていた。そこで我々は光電子顕微鏡PEEMシステムをSPring-8の硬X線ビームラインに設置し、約12keVの軟X線を照射して光電子イメージングを試みた。その結果、Co薄膜の下に埋め込まれたAuナノパターンを明瞭なコントラストで検出することに成功し、約200nmという深さからもAuのイメージングが可能であった。これは硬X線で励起されたAuオージェ電子(運動エネルギーが約11keV)の深い脱出深さによるものと考えられる。この技術はデバイス中の複雑な埋め込み構造の解析に極めて有効であり、今後の展開が大いに期待できる成果である。 3)半導体LSIの急速な進歩(高集積化)に伴い、ゲート絶縁膜の極薄化が進行し、素子作製プロセス中の化学反応によって酸化膜の一部還元(シリサイド化)が大きな問題になっている。そこで放射光光電子顕微鏡を用いてサブミクロン領域の局所構造解析を行った。電極の下に埋もれているHf02絶縁膜を真空中で加熱すると、局所的なボイドが形成される。この試料の光電子顕微鏡イメージは原子間力顕微鏡像と対応するものであった。このボイド部、および明部についてHfL3吸収端エネルギーで吸収像を撮り、またEXAFS解析を行った。その結果、結晶構造としてはいずれもmonoclinicのHfO_2であることが判り、PEEM像コントラストが化学状態によるものでないことが判った。この化学反応をさらに詳細に調べるために、ナノ領域光電子分光(エネルギー分析器付きPEEM)を行った。実験上のトラブルのために、予定した結果は得られなかったが、放射光を用いた光電子顕微鏡の威力が十分に発揮された。 4)KEK-PF円偏光アンジュレータビームライン(BL-28)に高輝度光電子顕微鏡用ブランチラインを設計し、3月末に完成した。PEEMシステムを用いた実験を平成18年度夏ビームタイムから実施する。
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