研究分担者 |
組頭 広志 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (00345092)
大久保 勇男 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (20376487)
堀場 弘司 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (10415292)
小野 寛太 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造研究所, 准教授 (70282572)
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研究概要 |
今年度は、1)新しく開発した3次元ナノESCA装置の性能評価とLSIゲート絶縁膜解析、2)投影型放射光光電子顕微鏡 (SPELEEM)のドリフト補正(空間分解能22nm達成)、3)燃料電池用触媒粒子の電子状態解析と触媒活性化メカニズム解明、4)抵抗変化型不揮発メモリー(ReRAM)の界面電子状態解析と抵抗変化メカニズムの解明、に重点化して進めた。 1)の走査型光電子顕微鏡については、SPring-8長直線部(27m)に設置する東大放射光アウトステーションBL07LSUの建設を進め、2009年10月に完成させた。ここに設置する3次元ナノESCA装置を作製し、まず高エネルギー加速器研究機構PFにおいて空間分解能300nmでの光電子イメージング、およびピンポイント角度分解光電子分光を実現し、LSI用poly-Si/HfO2/SiO2/Si基板についてねらった位置で深さ方向分布を測定することに成功した。この装置をSPring-8の東大ビームラインに移設し、空間分解能92nmでエネルギー分解能200meVの角度分解能光電子分光測定を達成した。また、最外周幅35nmから18nmに向上させたゾーンプレートの共同開発に成功したため、これを用いた空間分解能30nmの走査型角度分解光電子分光装置の開発をめざしていく。 2)の投影型光電子顕微鏡については、長時間観測下の試料ドリフトによって空間分解能が約100nmまで劣化するという問題に対処するため、床面振動防止対策を行うとともに試料ドリフト補正を行うための画像処理法を新しく開発した。これは、最初に参照試料を測定し、それとの比較で二次元の相関関数を求め、画像の再シフト量を見積もるという手法で、これにより空間分解能22nmでの光電子顕微鏡像が取得できることを実証した。さらに光電子顕微鏡の視野(通常数ミクロンΦ)における放射光強度の不均一性を補正する画像ソフトを開発した。 3)については、燃料電池用負極触媒(Pt,Ru)/電解質膜/正極触媒(Pt,Co)構造で運転経過で劣化した試料の斜め断面に放射光マイクロビームを走査してPt,Co元素の異常拡散を調べる手法を開発した。さらに、非白金系正極触媒として大きな注目を集めているカーボンアロイ触媒について硬X線光電子分光およびX線吸収分光によって不純物元素である窒素の電子状態を明らかにし、新しい触媒開発の指針を得た。これをもとに、白金に匹敵する非白金系正極触媒(開始電圧約1V,電力密度0.5W/cm2)を実現した。 4)については、Pt/CuO/Pt系平面型ReRAMの走査型光電子顕微鏡観察結果を解析し、化電流on状態では導導パスがジュール熱による還元反応(CuO->Cu+1/2O2)で形成され、電流off状態ではCu導電パスの一部が再酸化されることを明らかにした。この成果は2009年7月に新聞発表した。一方、積層型ReRAMとして注目されているAl/PrCaMnO3系で界面にAl2O3絶縁層が形成され、この絶縁層を介して電流のon-offが行われることをin situ光電子分光によって明らかにした。
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