本研究はPaα輝線観測に最適化した1m望遠鏡および近赤外線カメラを開発し、銀河面を広域観測することで銀河系内の星-ガス物質循環を明らかにするものである。今年度は本研究に用いる1m望遠鏡の準備と近赤外線カメラの開発を行った。1m望遠鏡は国内で詳細な駆動試験を行ったのち、チリに輸送した。チリではサイト麓のカラマ市にて再組立・調整を行ったあと、建設サイトであるチヤナントール山頂に輸送した。3月には山頂での組み立てを終え、CCDカメラを用いたファーストライト観測に成功した。続けて行われた試験観測の結果、ハルトマン定数0.2秒角、ポインティング性能16秒角という性能が得られた。これはこの望遠鏡が十分な光学・機械性能を持つことを示している。近赤外線カメラは国内で1m望遠鏡との機械接合試験を行い、望遠鏡搭載時に機械的不具合がないことを確認した。また広島大学かなた1.5m望遠鏡に搭載し試験観測を行った。観測調整の結果、近赤外線ではぼ設計通りの感度を有することが確認できた。また可視同時観測モジュールの組み込みも行い、近赤外線カメラユニットを完成させることができた。さらに、これら開発と並行して遠隔観測に向けた準備も進めた。監視用ネットワークカメラや気象センサーなどを望遠鏡サイトに設置し、ソフトウエアの整備も行った。ネットワークおよび山頂電源環境が整えば遠隔地から情報を取得・制御できる体制がほぼ用意できている。
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