研究課題/領域番号 |
17104005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大谷 義近 東京大学, 物性研究所, 教授 (60245610)
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研究分担者 |
木村 崇 東京大学, 物性研究所, 助手 (80360535)
ノリ フランコ 理化学研究所, フロンティア研究システム, チームリーダー (50415262)
原 正大 理化学研究所, フロンティア研究システム, 研究員 (90392167)
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キーワード | ナノ磁壁 / ラチェット駆動 / スピン流 / 磁壁モーター |
研究概要 |
生体系に特徴的な分子モーターの基本原理を応用した固体素子の実験研究は、世界的に見ても最近目覚しい発展を遂げているが、多くの研究はミクロな微粒子の力学的な運搬制御、イオンポンプ、電子または磁束量子の運動制御に集中している。本研究プロジェクトでは、電子スピンやナノ磁壁に着目し、ポテンシャルラチェットの原理を他に先駆けて適応することによりスピントロニクスデバイス研究に新しい方向付けを行う。そのために、次の二つの研究テーマ(1)非対称なポテンシャルを用いたナノ磁壁の運動制御ラチェット素子の実現と(2)非対称なスピン散乱因子を用いたスピン流ラチェット素子の実現に取り組んでいる。 昨年度は上述の(1)ナノ磁壁のモーター駆動法や運動検出手法の確立に主眼を置いて研究を遂行し、ナノ磁壁の運動制御手法確立にある程度見通しを立てることができた。そこで本年度は、スピン流ラチェットに力点を置き研究を遂行した。当初予想していた弾道的物理描像では、金属系スピン整流素子の駆動原理を構築することは容易ではなく、スピン緩和を伴う拡散伝導を考慮する必要があることが分かった。特に、面内微細構造における強磁性体と非磁性体の界面近傍でのスピン蓄積や吸収の詳細が明らかでないため、精密な素子設計を行うことが困難であった。そこで、拡散伝導から生じるスピン流の制御方法を確立することに主眼を置いて研究を遂行した。その結果、スピン拡散長と電気抵抗率の積を接合断面積で除して得られるスピン抵抗がスピン緩和の強度を示す指標となること、大きく異なるスピン抵抗を持つ物質を3次元的にオーミック接合することによりスピン流を任意の方向に誘導できることを見出した。この手法を用いると物質の組み合わせを考慮することによりスピン注入を制御性良く行うことが可能になる。スピン整流作用を誘導する機構の一つであるスピン軌道相互作用に着目して研究を遂行したところ、金属白金を用いて室温でスピン整流効果(スピンホール効果)の正・逆両方の効果(スピン流と電流間の相互変換)を電気的に観測することに世界に先駆けて成功した。
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