研究概要 |
最近,申請者達は『太陽系固体惑星の起源物質(Nature 428,921;2004)』,『酸素同位体的に不均一な太陽系の謎(Science 305,1763;2004)』,『太陽系の形成順序(Nature 423,728;2003)』を解明する重要な発見や仮説を提唱し,太陽系の新しい起源論を展開し始めた。本研究では,これらの発見に対応する太陽系創成期とそれに直接つながる先太陽系史に焦点を当て,これらの発見を進展させるための新しい証拠を隕石から探索する。この探索結果を取り入れ,現在提唱中の仮説を検証・発展させることにより新しい太陽系起源論を構築することを目的とする。 今年度は以下の研究を行った。 ●隕石中における先太陽系物質の系統的な探査 1.同位体顕微鏡を用いて隕石研磨片のマトリックス中の同位体異常を精査した。 2.同位体異常があった領域を新規購入設備である電界放出型走査電子顕微鏡によりナノメートル分解能で観察し,同位体異常を持つ物質が何かを同定した。 3.同定粒子を現有の分析走査電子顕微鏡により化学分析し,鉱物名と組成を決定した。 4.先太陽系物質の同位体異常の大きさと元素合成計算を結合することによりその起源となった恒星の候補を決定した。 5.隕石の種類毎に先太陽系物質の特徴および存在度についてデータベースを作成しつつある。 ●太陽系内の酸素同位体異常の起源と大きさ 1.隕石試料の中に含まれている46億年前の太陽風成分酸素の同位体比を同位体顕微鏡により測定する基礎開発を行った。 ●始原隕石構成物質の形成と進化 1.先太陽系物質の系統的な探査のため作成した隕石試料から難揮発性包有物(CAI)とコンドリュールを選別した。 2.選別したCAIとコンドリュールに短寿命核種(^<26>Al)を用いた年代測定を同位体顕微鏡により行った。 3.色々な隕石毎のCAI,コンドリュール形成時期と形成期間をデータベース化しつつある。
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