[1]コヒーレント電子源の開発/単原子電子源の電子放出特性を詳細に検討し、次の知見をえた。1)Au-Wナノ電子源は、強電界下(3.5V/Å以上)では3原子で終端した3角錐突起となる。2)単原子電子源から放出される電子ビームの空間可干渉性が従来の電子源に比較して、1桁以上優れている。3)単原子電子源から放出されるビームの指向性は極めて高く、実際の電子顕微鏡用電子銃で、効率は従来の電子源に比較すると2-3桁高い。4)単原子電子源が動作できる極高真空環境を実用電子銃容器として実現した。 [2]装置開発コヒーレント低速電子回折顕微鏡装置に中間レンズと対物レンズを組み込み調整し、SEM像の空間分解能として、1.7nm(5keV、中間報告では20nm)を達成し、100nm制限領域(中間報告では1μm)で、低速電子回折パターンを観測した。 [3]単分子を保持する高品質のグラフェン膜作製に成功(特許申請済)。単分子を保持・固定し、かつ低速電子線にとって半透明な理想的な膜は、1原子の厚さのグラフェン膜である。従来、数十nmの大きさの結晶剥離片のグラフェンしか存在しなかったが、本年度、一辺が数十μm以上の大きな膜(世界最大)を作製する技術を開発した。条件を選べば数mmの大きさの膜も製造可能であり、特許申請した。 [4]微小領域の回折像観察 中間報告で1μm角領域の500eVのパイロライトの透過低速電子回折像を(世界初めて)報告したが、装置の調整によって、さらに、狭い(100nm角)領域の金箔やグラフェン膜の回折パターンを観測した。単原子電子源搭載時には、10nm領域の回折パターンの観測が可能となり、単分子の回折パターン観測への道筋を引いた
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