研究課題/領域番号 |
17106002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
庄子 哲雄 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80091700)
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研究分担者 |
三浦 英生 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90361112)
宮本 明 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (50093076)
小川 和洋 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (50312616)
久保 百司 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90241538)
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 表面・界面物性 / 計算物理 / 原子力エネルギー / 長寿命化 |
研究概要 |
き裂先端における動的ひずみと応力加速酸化を主因とする応力腐食割れ(SCC)モデルに基づき、Fe基およびNi基合金に対して酸化抑制効果が期待できる置換元素を量子化学分子動力学による評価結果を基に選定し、SCCき裂進展試験ならびに高応力下での酸化試験を実施した。Ce、W、Zr、Yを固溶する316Lステンレス鋼を用いて評価したところ、進展速度はY〓W=Ce<Zrの順であり、Zr添加材を除いては概ね既存の原子力用ステンレス鋼より低い進展速度が得られた。特にY添加材については既存ステンレス鋼進展速度分布の下限値近傍の値を示した。 多軸応力下における高温水中酸化評価においてもW〓Y=Ce<Zr(鏡面仕上げ面)、Y<W〓Ce<Zr(旋削仕上げ面)の通り、Zr添加材は他の添加材より速い酸化速度を示す結果が得られており、SCC進展における応力酸化加速機構を支持する結果が得られた。 また、上記モデルにおけるステンレス鋼に含まれる微量元素の役割を調べるため、不純物濃度を下げた高純度 15Ni-16Cr-Fe合金ならびに15Ni-16Cr-2Mo-Fe合金に対して割れ感受性評価試験を実施した。材料間においてSCC感受性に大きな影響を与える降伏応力が異なることから、き裂先端応力場を考慮したSCC理論モデルによる予測によりその影響を除いた上での評価を実施した。微量元素を含まないいずれの材料においてもそれらを含む材料より高い割れ感受性を示した。分子動力学によれば、それらの中には程度は小さいものの酸化抑制効果を示すものもあった。分子動力学評価には添加元素濃度は考慮されていないものの、十分な濃度で固溶可能な元素であれば、酸化物生成エネルギーや酸素拡散特性が抑制方向に安定であれば、割れ抑制効果を発現できることが示唆された。一方で応力下酸化の割れに及ぼす影響の観点からそれらの局所変形性に及ぼす影響評価も必要であることが課題として挙げられた。以上より、耐応力腐食割れ特性に優れた第3世代の合金開発の指針として、材料の酸化安定性と応力下酸化速度に着目すれば、YやWなどの添加の有効性が指摘された。
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