研究概要 |
当初の研究実施計画に基づき,本年度は以下の成果が得られた。 1.地表面上の流れを考える場合,壁面曲がりの境界層への影響が問題となる。曲がり効果は回転効果と相似性があるため,任意回転軸を持つ流れ場を予測できる乱流モデルの開発に世界で初めて成功した。次に,浮力乱流場を予測する乱流モデルを構築し,浮力乱流に対するモデリングの指針を打ち立てると共に,ミクロスケールの予測性能を格段に進歩させた。しかし,メゾスケール場に近い乱流の直接数値シミュレーションを行い,新モデルを含む既存の代表的モデルを評価したところ,安定成層下の都市環境の予測ができないことが判明し,モデル構築に対する新たな提言を行った。 2.直接数値シミュレーションにより,まず大気の安定・不安定成層下で生じる乱流構造の変化を調べた。この都市スケール移流拡散現象を解明するために実施した成層乱流境界層のDNSは,本研究が世界で始めてであり,例えば強安定成層が形成される乱流境界層では,乱流構造が地表面近くでも消失することを明らかにした。更に,物質の大気拡散を妨げる逆勾配拡散現象が生じることも明らかにした.これらのデータは,本研究における次世代乱流モデル構築にも有効に利用している。 3.速度場と温度場の可視化計測:レーザ流速計(LDV)と画像処理流速計(PIV)システムを併用して,2次元丘周りの非定常複雑乱流場の挙動を精確に捉えることに成功した。また,日射・火災の局所的な効果を知るために,丘の上流側および下流側表面を分離加熱する模擬実験を行った。その結果,主流と剥離域における温度場特性は明確な2重構造を示し,特に下流側表面の熱的境界条件に支配されて,剥離域には高温部が形成されることが明らかとなった。この知見は,熱や汚染物質の滞留と関連して非常に重要である。これによる熱輸送現象を捉えるために,2次元変動温度場計測法を開発した。
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