研究概要 |
当初の研究実施計画に基づき,本年度は以下の成果が得られた。 1. 複雑乱流場における熱・物質移流拡散過程の解明 (1) 速度場と温度場の可視化計測:2次元丘を通過する乱流境界層の速度場と温度場をレーザ流速計(LDV),画像処理流速計(PIV),線径0.63μm冷線等を用いて測定した。丘上流の境界層厚さが背面に形成される剥離・再循環域の形成に多大な影響を及ぼすことなど,そこで生起する現象の理解に必須の知見を得た。 (2) 物質輸送過程の風洞実験:汚染物質の拡散過程を知るために,2次元丘上流の一点からエチレンを放出し,丘下流の剥離域における濃度場の特性を調べた。丘の存在が濃度拡散過程に非常に強く作用して,分布を急拡大させることが明らかとなった。 2. 都市スケール輸送現象の素過程のモデリングと乱流モデルの統合 本研究で実施したDNSと実験のデータベースを用いて,代表的なLES,RANSモデル,新規に開発した乱流モデルとLES用SGSモデルの予測性能を評価した。本研究で開発した低負荷RANSモデルは,複雑地形に対応し最良の予測値を与えた。都市環境における流れの非定常性と多様な壁面の存在を考慮すれば, LESとRANSモデルそれぞれの特長を最大限まで活用する数理モデルが,次世代乱流モデルの基礎であるとの結論に達した。 3. 統合乱流モデルを用いたリアルタイムシミュレータの開発 境界埋込み法と境界適合法を適用した複雑境界・非定常解析スキームを完成させるともに,ハイブリッドLES/RANSシミュレーション(HLR)法を確立し,リアルタイムシミュレーションの基盤を構築した.HLR法は計算負荷が極めて小さいにも拘わらず,丘下流の複雑な速度場がDNSと同程度の精度で予測できた。 4. データベースの作成実験およびDNSの結果をデータベースに登録・整備して,乱流モデルの開発および検証に利用した。また,作成されたデータベースは広く利用されるようにしている。
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