研究概要 |
(1)クライオ電子顕微鏡像3次元再構成によりMD-微小管複合体の3次元クライオ電子顕微鏡像を得ることに成功した(分担者,吉川との共同研究).(2)負染色電子顕微鏡法により,MD中のリンカーの位置を同定した.リンカーはATP加水分解にともないレバーアーム様の動きをすると考えられている.リンカーはちょうどAAAリング構造を横切るように位置しており,その先端はストーク基部に位置していた(Leeds大,Burgessらとの共同研究).(3)ダイニンモータードメイン(MD)の大量発現系の構築,結晶化スクリーニングをおこなっているが,その特異な形態のために容易には結晶化しないことを覚悟している.(6)MDと微小管はATP加水分解にともない解離会合を繰り返している.これとパワーストロークの位相があうことが微小管滑り運動には必須である.そこでMDと微小管の相互作用を定量的に測定し,これがATP加水分解サイクルでどのように調節されているかを検討した.その結果,パワーストローク前には微小管に弱く(解離定数〜50μM)結合していたMDがパワーストローク後には強く結合する(解離定数〜0.2μM)ことが分かった.またこの結合の強さの変化はリンカーの動きと同様にAAA1モジュールのATP加水分解と共役していることがあきらかとなった.(7)微小管結合部位はAAAリング構造と12nmにもなるコイルドコイルで隔てられている.コイルドコイルを構成する2本のαらせんにCys残基を導入し,ジスルフィド結合で2本のらせんを固定するという実験をおこなった.この結果,2本のらせんは1ヘプタドリピート分(7残基)揺らいでおり,この揺らぎを共有結合で抑えると,ATP加水分解部位と微小管結合部位のコミュニケーションが断ち切られることがあきらかとなった.つまりダイニンでは,コイルドコイルでのらせんどうしの滑りがATP加水分解部位と微小管結合部位間のコミュニケーションに利用されていることがあきらかとなった.
|