研究概要 |
クライオ3次元電子顕微鏡法でダイニンモータードメイン(MD),微小管複合体の構造を明らかにした(Mizunoら,PNAS2007)。この結果,MDのATPase部位をふくむリング構造と微小管結合部位をつなぐ10-14nmもの長大なストーク,コイルドコイルが,棒と考えればよいほど硬いことがあきらかとなった。これはパワーストロークを支える構造としてストークに期待される性質である。一方,このコイルドコイルは,動的揺らぎを介して,ATPase部位と微小管結合部位が情報交換をしていることが期待されるが,実際に組換え体のジスルフィド架橋から,こうした動的揺らぎが存在し,これが情報伝達を担っていることを明らかした(Konら,投稿準備中)。つまり,ダイニンMDから突き出しているストーク構造は,パワーストロークを支えるには十分なほどの硬さをもっが,一方で動的揺らぎによって情報伝達をおこなっているという興味深い結果がえられたことになる。また,生化学的機能解析では,ATP加水分解にともない,3か所存在しているMD中のATPase部位のうち,AAA1モジュールのATPaseサイクルに共役して,レバーアームスイングと微小管との解離,会合が生じることを明らかにした(Imamulaら,PNAS2007;Mogamiら,J。Bio。Chem。2007)。つまり,ストップトフローを用いたキネティックス解析から,ATPが微小管,ダイニン複合体に結合するとまず微小管とダイニンの解離がおこり,次いでレバーアームがスイングする(recoverystroke)。ATPが加水分解されるとまず微小管にダイニンが結合し,次いでレバーアームが再び元の位置にスイングする(powerstroke)。このような時間差のある共役の結果,ダイニンは微小管上を滑り運動できることを初めて明らかにした。
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