研究課題/領域番号 |
17107005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
近藤 寿人 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (70127083)
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研究分担者 |
蒲池 雄介 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (90263334)
内川 昌則 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (80346147)
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キーワード | Sox2 / エンハンサー / 転写制御因子 / 細胞間シグナル / 神経板 / 中胚葉 / ステムゾーン / ノックアウトマウス |
研究概要 |
脊椎動物の初期胚における大規模な細胞分化・形態形成過程である神経系原基(神経板)の形成は、転写制御因子遺伝子Sox2の発現を伴う。その過程におけるSox2遺伝子の制御を分析することによって神経系成立の基盤となる機構を、本研究によって明らかにする。特に神経板形成期に作用するSox2遺伝子のエンハンサーの制御機構から、神経板の領域毎、あるいは神経板形成の段階毎の転写制御機構、そして更にその上流の細胞間シグナルについて研究する。 平成20年度は特に初期胚で活性を持つ2つのエンハンサー、すなわち、マウス胚の胚盤葉上層から前部神経板にかけての発生段階でSox2遺伝子の活性化を担うエンハンサーN-2と、後部神経板と中胚葉の共通の前駆体で活性を持つN-1について研究を進めた。エンハンサーN-2は、胚盤葉上層では、Zic2/3と複数箇所に結合するOct3/4の協同的な作用によって活性化されるが、前部神経板では、POU因子のOct3/4(Class V)からOct6/Brn2(Class III)への切換わりとともに、エンハンサーN-2の活性化がOtx2依存的になる。初期胚におけるClassIII POU因子とOtx2の発現はこのN-2の制御の進行と対応して変化する。 正常マウス胚では、後部神経板と中胚葉の共通の前駆体(ステムゾーン)でひとたび活性を持ったエンハンサーN-1は、中胚葉組織ではその活性を失う。しかし、中胚葉組織である体節前駆体から異所的に神経管が生み出されるTbx6ノックアウトマウスでは、エンハンサーN-1が中胚葉で活性を持ち続け、それが中胚葉原基でのSox2の発現を活性化し、その結果異所的な神経管が生み出される。このマウス胚でエンハンサーN-1をノックアウトすると、異所神経管は生じなくなる。同様に中胚葉原基から神経管を生ずるWnt3a、Tの欠損マウス胚においても、エンハンサーN-1の制御異常が異所神経管の原因となっている。エンハンサーN-1の制御が、後部神経板と中胚葉という2つの組織分化の分岐に中心的な役割を果たしている。
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