カンキツかいよう病菌のApl1は、Xanthomonas属細菌に広く分布する非病原力因子AvrBs3ファミリーに属するにも拘らず、かいよう形成に関与する。これは、Apl1及びその他の非病原力因子が抵抗性誘導を抑制するサプレッサー機能を発揮するためにおこることを明らかにした。Apl1は、カンキツ細胞の酵素ペクチンメチルエステラーゼ(PME)と特異的に結合することが分かり、この結合が本因子のサプレッサー機能オン・オフを司っていることが解った。また、Apl1は、オーキシン合成遺伝子等のプロモーター領域に存在するupa20ボックスに結合することをゲルシフトアッセイによって示した。また、上記PMEとの結合がカンキツ細胞内でおこること、また、この結合がそれぞれの分子の局在性を変化させることを共焦点レーザー顕微鏡で確認した。さらに、カンキツかいよう病菌がかいよう症状を呈するようになる時、テロメレースの活性が上昇することを発見した。即ち、テロメレースの遺伝子をクローニングし、その配列を決定した後、遺伝子ノックダウンコンストラクトを根頭がんしゅ病菌感染システムを用いて、前処理すると、かいよう形成が抑えられることを発見した。これらのことから、Apl1は、PMEと結合することによって、サプレッサー活性を示すようになるが、その際、一連の植物遺伝子の発現をオンにして、結果として、テロメレース活性を高め、かいよう症状に導くことが明らかになった。ここに、新たな細菌病耐性植物作出のための新しい戦略を示唆することが出来た。
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