研究概要 |
Hydrogenobacter thermophilus TK-6株の還元的TCA回路に関わる全酵素の精製とチャラキウラリザイションを目指している。本年は,残された還元的TCA回路に関わるフマレートレダクターゼ(FRD)の精製を試み,その諸性質を明らかにした。その結果,H.thermophilusのFRDはNADHを還元力として用いる可溶性の酵素であること,さらに,5個のサブユニットからなることを明らかにした。これまでには4つのサブユニットから成るFRDは知られていたが,5サブユニット型の酵素は始めての例となる。また,H.thermophilusにおいてはドラフトゲノムが得られているため,それぞれのサブユニットに対応する遺伝子も同定出来た。驚いたことに,5個の遺伝子はゲノム上でばらばらに存在していた。 前述のようにH.thermophilusのドラフトゲノムが利用可能となり,検索の結果,本菌には6種類あると思われていたフェレドキシン遺伝子が7種類あることが判明した。これらのフェレドキシンのうち,実際にH.thermophilusの菌体内で発現していると思われるフェレドキシンを大腸菌の発現系を用いて精製を試みた。H.thermophilusの還元的TCA回路に関わる酵素のうち,4種の炭酸固定酵素は既に精製されており,また今回,フマレートレダクターゼの還元力供給システムも検討可能になった。さらに本菌は,GS-GOGAT系で窒素同化作用を行なっているが,その還元力にもフェレドキシンが用いられていることが明らかとなっている。そこで,これら還元力を必要としている反応の多さとフェレドキシンの多様性(ゲノム上7種)の関係が,進化適応上も極めて需要となり,これらのフェレドキシンのうち,実際にH.thermophilusの菌体内で発現していると思われるフェレドキシンを大腸菌の発現系を用いて精製を試み,精製酸化還元酵素との反応性を試験する研究を開始した。まだ全体像は得られていないが,現在までに7種のうち,特に重要と思われるフェレドキシンの存在が確認された。 さらにH.thermophilusのアミノ酸生合成系を含む窒素代謝の全容解明も進行中である。
|