研究概要 |
本研究では、光周性を制御するキー遺伝子であるDio2の発現制御と機能解析を中心に行った。 (1)ウズラの光周反応に伴う甲状腺ホルモンの取り込み機構を明らかにする事を目的とし、有機陰イオントランスポーター(Oatp)ファミリーの発現解析と機能解析を行ったところ、cOatp1c1が光周反応に重要なサイロキシンの取り込みを担っている事が分かった(Encocrinology,2006)。 (2)短日性繁殖動物であるヤギを用いてDio2の発現及びT_3量を光周性に重要な脳部位で調べたところ、長日性繁殖動物とは異なり、長日条件で減少することを見出した(Endocrinology,2006)。 (3)甲状腺ホルモンを不活型に換える酵素、Dio3について日長に伴う変動を調べたところ、活性型酵素であるDio2とは正反対の変動を示すことが分かった。すなわち、光周性調節に重要な脳部位における活性型T_3濃度の正確な調節が光周性反応に重要であることが分かった(Endocrinology,2005)。 (4)長日条件でも短日型の活動パターンを示す変異マウス(CS)を用いて概日時計である視交差上核や末梢組織における時計遺伝子の発現を調べたところ、視交差上核からの出力系に異常があることが分かった(Neurosci Res,2006)。 (5)鳥類の性腺の発達に関与していると考えられている脳の季節的形態変化が甲状腺ホルモンT_3の投与により生じることが明らかとなった(Cell Tissue Res,2006)。 (6)ウズラDio2遺伝子のプロモーター解析を行ったところ、時刻依存的なDio2の光誘導にはcAMP responsive element binding proteinは関与していないことが明らかになった。 (7)短日性のアユについて、Dio2,Dio3の発現を調べ,生殖腺発達が刺激される短日条件下でeppendymal layerにおけるDio2の発現が増加することを見出した。一方、Dio3の発現には変化が見られなかった。また、脳内に発現する光受容体ロドプシンの抗血清を作成し、preoptic areaに免疫陽性細胞が局在することが明らかにした。長日性のメダカの増殖体制を確立すると共に、Dio2 cDNAの翻訳領域の塩基配列をクローニングした。
|