研究概要 |
我々はNADPH酸化酵素の細胞質因子であるp40全長の結晶構造解析と分子内相互作用の存在を明らかにした.p40はPX-SH3-PB1のドメインより構成されるが,最近の細胞を用いた実験より,p40は活性酸素発生には直接関与しないが,活性化に伴い膜へ移行し,20倍程度活性酸素の発生を亢進することが明らかにされた.P40の結晶構造解析の結果,PXドメインとPB1ドメインは相互作用するのに対し,SH3ドメインは電子密度が薄く,比較的自由度が高いことが示された.X線小角散乱実験から求めた溶液中での三次元構造モデルと本結晶構造を重ね合わせたところ,両者は大きさ,形状共にほぼ一致したことから,結晶中で観察されたPXドメインとPB1ドメインとの相互作用は溶液中でも存在し,ドメインの配置を規定していることがわかった.結合界面にはPI(3)P結合部位が一部含まれており,PB1ドメインとの相互作用によりPXドメインのPI(3)P結合部位はマスクされていることが示された.実際,ドメイン間の相互作用に関与する残基に変異を加えたところ,p40はPI(3)Pを多く含む初期エンドソームに局在した.PI(3)Pはファゴソーム膜に多く存在していることから,P40のPXドメインとPI(3)Pとの相互作用はNADPHオキシダーゼの機能に重要であり,PB1ドメインによるp40の自己阻害はNADPHオキシダーゼの制御機構の一つであることを明らかにした.このほか、インターフェロン産生系のキー分子であるRIGIのCARDドメインの構造を明らかにした。
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