研究概要 |
Klothoと結合する分子としてNa+,K+ATPaseを同定した。Na+,K+ATPaseにはリン酸化状態の異なる2つのフォームがあり、Klothoは細胞内顆粒において高リン酸化フォームと結合しており、細胞外のカルシウム濃度の低下に素早く応答してNa+,K+ATPaseの細胞表面へのリクルートを調節している。脈絡膜では細胞外カルシウム濃度の低下をシグナルとして細胞表面のNa+,K+ATPase量が瞬時に増大し、作り出されたNa+の濃度勾配に依存して脳脊髄夜へのカルシウムの移送が制御されている。Klothoノックアウトマウスではこの制御機構が破綻しており、脳脊髄液へのカルシウム移送量の低下とそれを反映した脳脊髄液のカルシウム濃度の低下が観察される。同様に血清カルシウム濃度の低下に伴い、上皮小体ではPTHの分泌が誘導されるが、ノックアウトではPTHの分泌誘導が顕著に低下しており、また、Na+,K+ATPaseの特異的阻害剤であるウアバインによってもPTHの分泌が阻害されることが確認された。一方、Klothoは活性型ビタミンD合成の律速酵素(Cyp27B1)の発現を負に制御する因子として機能しており、Klothoを欠失すると血青の活性型ビタミンD濃度が亢進し、高カルシウム、高リンがもたらされる。 カルシウム濃度の制御はKlotho発現細胞におけるKlotho・Na+,K+ATPase複合体によるQuick Klotho dependent-Calcium Transport RegulationとPTH、ビタミンDによるHormonal-Regulationの2層からなっており、Klothoはこの2つの制御系の鍵を握る分子として機能しており、生体では微細なカルシウム濃度の変化をキャッチして時々刻々とカルシウム濃度が制御されていることが明らかとなった。
|