研究概要 |
α-Klotho、FGF19 subfamilyによる生体恒常性維持機構の全体像を解明する為に、in vivoにおけるα-KlothoとFGF23、FGF受容体との結合、リン酸化カスケード、ターゲット遺伝子の発現を解析、Klotho family、FGF19 subfamilyのフィードバック作用の検討を行い、α-Klotho、FGF23、1,25(OH)2D,PTHから成る電解質代謝の全体像を明らかにした。 α-Klotho蛋白は細胞外カルシウム濃度の低下に素早く応答してNa+K+ATPaseの細胞表面へのリクルートを制御しており、Na+の濃度勾配、膜電位の変化に応答して腎臓でのカルシウムの再吸収、脈絡膜を介した脳脊髄液のカルシウム濃度の制御、上皮小体でのPTHの分泌を制御していると結論された。 血清α-Klotho濃度が顕著に増加している患者を見出した。一方、α-klothoミスセンス変異(H193R)により顕著なα-Klothoの機能低下を示す患者が見いだされた。マウス、ヒトの結果をまとめると、α-Klotho遺伝子の機能欠損変異はいずれも高リン、高ビタミンD,高カルシウムを示し、機能獲得変異はまさにミラーイメージの症状である低リン、低ビタミンD,低カルシウムを示しており、これらの事実はα-Klothoはまぎれもなくカルシウム、リン代謝制御因子であることを示していた。Klothoの血清値の測定も開始されており、ヒトに於けるKlotho研究の進展している。これら結果をまとめて、カルシウム、リンホメオスタシス制御機構の新たなコンセプトを提案した。 これらの成果を基盤に、それぞれのステップの分子メカニズムの解明、α-Klothoの機能制御に関連する新たな分子の同定、電解質を制御する新たな分子機構の解析へと展開している。最終的には、これらを統合して代謝応答制御を介した動物個体の生存戦略を明らかにしたいと考えている。
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