研究課題/領域番号 |
17109009
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
名和田 新 九州大学, 大学院医学研究院, 特任教授 (10038820)
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研究分担者 |
柳瀬 敏彦 九州大学, 大学院医学研究院, 助教授 (30239818)
岡部 泰二郎 九州大学, 大学病院, 助手 (40264030)
野村 政壽 九州大学, 大学病院, 助手 (30315080)
大江 賢治 九州大学, 大学病院, 助手 (30419527)
西 芳博 久留米大学, 医学部, 講師 (20352122)
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キーワード | アンドロゲン受容体(AR) / レプチン / 肥満X / SARM |
研究概要 |
我々はアンドロゲン受容体(AR)KOオスマウスはエネルギー代謝の低下により晩発性肥満をきたすことを報告した(Diabetes 54:1000-8,2005)。この研究成果を背景に本研究では肥満におけるARの中枢性関与とその機序の解明を試みた。脂肪由来ホルモンのレプチンは摂食とエネルギー代謝の主要調節因子として働くが、ARKOマウスでは、血中レプチン濃度の増加にも関わらず摂食量は正常であったことから、レプチン抵抗性が存在する。我々は昨年度、成獣オスマウスの視床下部諸核におけるAR発現を免疫組織染色にて証明し、その発現パターンは既報のレプチン受容体の発現パターンに類似することを報告した。本年度はより直接的に二重染色によりオスマウス視床下部弓状におけるARとレプチン受容体の共局在を証明し、レプチン支配下の中枢性エネルギー調節機構にARが関与する可能性を示した。昨年度、ARのリガンドであるdihydrotestosterone(DHT)の脳室内投与はオスマウスの食欲を一過性に抑制し、さらに睾丸摘出による内因性アンドロゲンの供給遮断により、レプチンの脳室内投与による食餌摂取抑制効果と体重減少効果の減少を報告した。本年度はさらにARのレプチンシグナルへの関与に関して、in vitroにおけるより詳細な基礎的検討を行なった。レプチンはレプチン受容体に結合し、STAT3のY705をリン酸化することによりその主要な生物作用を発揮する。興味深いことにARはDHT濃度依存性にレプチン-リン酸化STAT3の特異的標的遺伝子であるAcute Phase responsive element(APRE)並びに内因性の標的遺伝子であるPOMC(proopiomelanocortin)遺伝子の転写を促進した。またARはレプチン誘導性のSTAT3の転写活性化も増強した。このレプチンシグナル増強効果はAR特異的であり、ERα,β,PR,GRでは認められなかった。また、ARのこの効果の発揮にはARのDNA結合領域とAF-1領域が重要であった。さらにARのレプチンシグナルの増強効果は少なくともSTAT3Y705リン酸化を増強するためではないと考えられた。現時点では、ARがSTAT3の核内移行を増強する可能性を示唆する結果が得られており、現在、ARKOマウスにおけるSTAT3の細胞内局在を検討中である。また、ARKOマウスの肥満機序の一つとして白色脂肪組織のUCP-1の発現低下が認められたことから、脂肪細胞のUCP-1の発現上昇効果を有し、前立腺癌細胞株のPSAの上昇をきたさぬような、生活習慣病創薬としてのselective androgen receptor modulator(SARM)の開発を試みている。候補化学物質のin vitroスクリーニングをDHTを対照として行なったところ、S42(仮称)という一つの化学物質が該当することが判明した。現在、in vivoにおけるS42のSARM作用の有無を検証中である。
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