研究概要 |
現実世界と仮想世界を実時間で融合・表示する「複合現実感(Mixed Reality; MR)」は,近年急速な進歩を遂げているが,これまでの取り組みは視覚的な融合だけに留まっていた.新しい情報提示法としてさらに発展させるために,本研究では,「視覚」に「聴覚」「触覚」も加えた「三感融合型」の複合現実感を考える.本研究では,以下の3点に焦点を当てたMR空間構成法を研究し,具体的に稼動するシステムで実証する. 1. 現実世界で発した音刺激がMR空間に及ぼす影響とその精度 2. 現実空間に重畳される仮想オブジェクトのCG像と音像の幾何学的整合性 3. 触知できる実物体に仮想映像を重畳表示した場合の視覚・触力覚の補完機能 20年度は,以下の3つの研究項目を推進した. (a) MRにおける視聴覚融合の集大成として,19年度までに構築したシステムを,現実空間の音と仮想空間の音を反射や遮音を考慮して混在させるシステムへと拡張した. (b) また,MR空間における視覚と触力覚の補完機能を確認する新たな対象として,実物体に重心の異なるCGモデルを重畳描画する系統的な実験を行い,重心知覚が視覚に引きずられることを確認した.また同実験の一部を,インタラクション2009で展示し,インタラクティブ発表賞を受賞した. (c) 19年度に引き続き,聴覚・触覚を積極的に導入したMRアトラクションを開発した.このMRアトラクションは,特に(a)の技術を積極的に利用したものであり,第13回日本バーチャルリアリティ学会大会に技術展示し,学術奨励賞を受賞した.
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