本年度は最終年度として、当初計画通り基盤的な研究を進めると同時に、情報通信研究機構と協力して、我々が開発してきた翻訳支援エディタとレファレンス・情報資源を組み込んだ「みんなの翻読」(http://trans-aid.jp)を一般公開することとなった。 基本的な研究では、レファレンス・ツール構築において30万エントリの人名辞書を精度95%で、また200万エントリの専門用語対訳辞書を精度訳60%で構築した。前者はそのまま十分実用に耐える規模となり、後者もクリーニングアップして実用化可能となった。関連既訳文書のリサイクルについては段落単位のアラインメントを高度化し、ほぼリサイクルシステムが実用化段階に達した。イディオムの柔軟な辞書引きについても十分な精度で翻訳支援システムに組み込むことができた。 利用者からの検証は、3名の翻訳者に依頼して実際の書物の翻訳を試行的に行ってもらい有効性を評価した。概ね、20%から30%、翻訳時間を節約できることがわかったほか、文脈を読むリズムを維持できるため下訳の精度が向上することが観察された。試験利用した翻訳の一つは『宇宙開発戦争』として作品社から2009年3月に出版され、もう一つ、『ブラックウオーター』も2009年内に出版される予定である。試験利用を受け.て、2009年3月からは、アムネスティ・インターナショナル日本、デモクラシーナウ!ジャパン、グローバルヴォイシズオンライン日本翻訳チームなどが実利用へ向けた試行利用を開始している。
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