研究分担者 |
蘆田 宏 京都大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (20293847)
HAROLD Hill 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 人間情報科学研究所, 主任研究員 (20395099)
松宮 一通 東北大学, 電気通信研究所・人間情報システム研究部門, 助手 (90395103)
西野 由利恵 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 人間情報科学研究所, 研究員 (50329504)
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研究概要 |
本研究の目的は,視覚と体性感覚(触覚・自己受容感覚)により3次元物体を認識するダイナミックな脳のメカニズムを心理物理実験とfMRIによる脳活動計測を用いて明らかにすることにある.平成17年度は、3次元の仮想物体と実成形物体を用いた,異種感覚統合の新しい実験手法を開発するとともに,視覚と体性感覚の協調・競合メカニズムを明らかにする心理物理実験,および体性感覚(触覚)による3次元物体の記憶・保持の脳部位を明らかにするfMRI脳活動計測実験に着手した. 視覚と体性感覚の協調・競合メカニズムに関しては,視覚-力覚提示装置を用いて3次元仮想刺激の形状判断を行なう心理物理実験を開始し,視覚と体性感覚の時空間的なずれが物体認知に及ぼす効果を明らかにできる見通しを得た.また,視覚と体性感覚の相互作用を錯視現象を利用して調べることとし,まずは凹状顔錯視(hollow-face illusion)がどの程度,対象の記憶に依存しているかを明らかにした.さらに,身体動作を意識したときに視覚的な大きさ判断が変化することを見出し,身体感覚と視覚の情報が脳内で密接にリンクしていることを明らかにした. 触覚による物体認知のfMRI脳活動計測実験に関しては,CG/CADソフトで3次元形状を設計し,新規に導入した3次元プリンタを用いて形状がわずかに異なる実物体を石膏により多数,成形した.このような実物体を用いて,被験者に触覚による3次元物体の識別,記憶,再認,想起の各課題を行なわせ,各課題遂行時の脳活動を計測した.これらの脳活動の統計的な比較・分析により,触覚による3次元物体の学習・記憶には頭頂野が重要な役割を果たすことを確認した.今後は,実験データのより詳細な分析を進め,触覚イメージの想起に係わる領野の特定を試みる予定である.
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