研究概要 |
DNAコンピュータによる組合せ問題の超並列解法は、(1)DNA配列設計、(2)スケールアップ、(3)低速性・低信頼性の3つの壁に突き当たっている。本研究は、アクエアスコンピューティングにより配列設計の困難(1)をクリアし、有機化学的なメモリ書込みの新たな方法を実装してスケールアップ(2)し、マイクロリアクタの利用によって高信頼化(3)を目指す。本年度は、5月24日に東大駒場キャンパスにて研究集会を持ち、それぞれの役割分担を確認し、必要に応じて個別に研究打合せを行った。 山村は、システム設計と計算システムの基礎実験を行っている。本年度は有田たちのテンプレート法を用いて長さ20ベースの配列を28語設計し、光結合の条件によって11語を選んだ。藤本がこれを光結合DNAとして合成し、書き込み実験を行った。 清尾は、制限酵素を利用した分子メモリーの小スケール化を目指し、特異な分岐構造を有する櫛型DNAの合成法の開発を行っている。本年度は櫛型DNA合成の鍵化合物である分岐ユニット導入試薬について二種類のものを設計し、それらの合成の鍵となる反応について各々検討した。 藤井は、DNAの光結合反応を行うためのマイクロ流体デバイス上のマイクロリアクタを開発している。本年度は、基礎段階として,光結合性DNAを取り扱う際に必要となる,光照射,電気泳動等の操作をマイクロ流体デバイス上で自動化することを目指し,デバイスの試作から評価実験までを行った.サンプルDNA溶液を用いて,約250pLの液滴形成から,ファイバによるプラグへの光照射,分離マトリックスであるポリマー溶液とプラグの合一,電圧印加による電気泳動までの一連の操作の自動化をデバイス上で実現できた. 藤本は、光結合性DNAの開発を行なっている。本年度は、光応答性核酸塩基としてカルボキシビニルウラシルを含むDNAを用いることで枝分かれ構造を容易に作り出せることを見出した。5'末端に含む人工DNAをガラスビーズ上に固定化させた系を用いることで酵素を使わずに簡単な2-SAT問題が解けることを実証した。この他、光応答性人工塩基ライブラリーをさらに充実させた。
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