研究課題/領域番号 |
17200023
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坂井 克之 東京大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (70376416)
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研究分担者 |
當間 圭一郎 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (30360845)
宇川 義一 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (50168671)
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キーワード | 前頭葉 / 脳波 / 磁気刺激 / 選択的注意 / 脳領域間相互作用 / 機能的連関 / 機能的核磁気共鳴画像 |
研究概要 |
本研究課題は前頭葉制御のメカニズムを、前頭葉から後方連合領域に至るトップダウン経路の信号伝達効率の上昇として明らかにすることを目的としている。このためにまず経頭蓋磁気刺激(TMS)を行いながら被験者の脳活動を脳波により持続的に記録できる実験システムを構築した。本年度の研究では、正常人被験者が特定の視覚次元に選択的注意を向けているときに前頭葉TMSを行ったところ、注意を向けた視覚次元に応じてTMS誘発性脳電位変化が脳表上を異なったパターンで伝播することが明らかになった。さらにTMSを行って30ミリ秒後の脳電位変化の電流源を解析したところ、その視覚次元処理に特化した後方連合領域に電流源が同定された。選択的注意において前頭葉から後方連合領域に対してトップダウン信号が送られると考えられているが、この結果は後方連合領域における前頭葉からの信号伝達効率の変化としてトップダウン信号の実体を初めて明らかにしたものといえる。脳領域間の情報伝達の様相を10ミリ秒単位で特定できる本実験系は、高次認知機能の脳内メカニズムの動的側面を明らかにする有用な手段となる。さらに本年度は前頭葉前方部の脳腫瘍を切除した患者さんを対象として機能的核磁気共鳴画像を用いた実験を行った。前頭葉前方部が損傷を受けていても、注意を向けた視覚次元に対応した後方連合領域に正常な活動の上昇が認められたが、前頭葉後方部と後方連合領域の機能的連関が低下すること、そしてこれが注意の切り替えの障害に対応していることが明らかになった。局所脳領域の活動の解析に終始していた従来の研究から、脳領域間の信号のやり取りに焦点をあてるという一貫した目標のもと研究を行い、今後の新たな研究の展開のさきがけとなる成果が得られた。
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