研究概要 |
ヒト変異TTR遺伝子を導入したマウスを用いて、マイロイド沈着に及ぼす環境要因を解析した。そのため、SPF(Specific pathogen free)環境とコンベンショナル(CV)環境において、マウスを飼育した。CV環境では、アミロイドが沈着するが、SPF環境ではまったくアミロイドが沈着しないことを見出した。ついで、CV環境下にての飼育期間が長ければ、それだけアミロイド沈着が増加することを明らかにした。昨年度までに、可変型相同組換え法を用いて、第1段階でマウストランスサイレチン(mTtr)遺伝子を完全破壊し、第2段階でヒトTtr遺伝子を置換し、ヒトのTtrのみが発現するマウスの作製に成功している。これのマウス系統の交配により、mTtr遺伝子完全破壊マウス(-/-)、野生型ヒトTTR cDNA(Val30)を-つ持つマウス (+/Val30),変異TTRを-つ持つマウス(+/Met30)それぞれのホモマウス(Val30/Val30,Met30/Met30)とヘテロマウス(Va130/Met30)を樹立している。これらのマウスを用いて詳細な解析を行った。(-/-)マウスでは、mTtr遺伝子のmRNAも血清のmTTRも検出されない。(+/Val30)と(Val30/Val30)における発現を比較したところ、肝臓でのVa130mRNAおよびVa130タンパクの発現は、Val30の遺伝子量に比例していたが、血清中のVal30を測定したところ、(Val30/Val30)のほうが、低いことが分かった。この原因を追究したところ、分泌が悪いのではなく、Val30の4量体の安定性が悪いためであることが分かった。その原因として、マウスレチノール結合タンパクとの結合が悪いためであることを明らかにした。さらに、Met30/Met30マウスでは、4量体の安定性はVal30/Val0と比較して悪いが、2量体はより安定であることが分かった。
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